千葉県いすみ市 大原漁港。イセエビをはじめ、黒潮に乗ってくる多くの魚が水揚げされる県内有数の漁港。ですが近年様々な課題に直面しています。
大勝丸 船長 長谷川 政弘 さん
「イセエビなんかも少なくなりましたね、地震や津波が来てからかなり変わってしまった」
漁獲量が減れば漁師も減る。こうした問題を解決するために、いすみ市いすみ東部漁協地域商社SOTOBO ISUMIが、漁業を盛り上げる為に企画した新しい取り組みを始めようとしています。
株式会社SOTOBO ISUMI 代表取締役 藍野 彰一 さん
「SOTOBU ISUMI につきましては、いすみ市とNTT東日本と京葉銀行が地方創生で3社連携協定を結び、3年前に地域商社として誕生した」
「いすみ市の漁業が活性化して、漁師さんもその結果として漁師さんの所得が多くなれば町も活性化してくるだろうと、漁協を盛り上げていきたいということをやってきている」
そんなSOTOBU ISUMI が漁業活性化として支援しているのは”漁業DX”というデジタル技術を使ってアナログな業務の効率化を目指していくもので、NTT東日本が推進している情報技術です。
NTT東日本 千葉事業部 三木 篤 さん
「地域ごとの魅力がそれぞれあると思う。なのでこの地域ならではの魅力をどう引き出せるのか、そのお手伝いをICT技術を使ってできるか、ということがチャレンジとしてあると思う」
夷隅東部漁業協同組合 専務理事 川名 由男 さん
「期待は持てます。いろいろな魚種が黒潮、親潮にのって来る、その中で様々な漁業を行い一年を回している」
「そういう点ではこの組合には若い人もいるので将来も非常に明るいものだというふうに思う」
夷隅東部漁業協同組合 代表理事組合長 滝口 洋 さん
「私は現場のやり方自体を変えなければいけないと思っている」
「漁師は魚を獲ってくることがメインだが、いろいろな形の収益の窓口たるものは市場なんです」
「魚を取り扱う現場なので、そこのシステムが、きちんと作動し動かなければならない」
「収益性を上げるには市場に上がり、きちんと処理できなければならないので、やはりそういった事(漁業DX)と連動しなければいけない事だと思う」
大勝丸 船長 長谷川 政弘 さん
「他所から入ってきてくれた人が、一生懸命自分たちの単価を上げるようにやってくれるので『みんなで頑張っぺよ』というような感じですね」
そしてもう一つ、水揚げされた魚の鮮度を管理しながら、品質の高いものを市場に販売しようとする取り組みも行われています。
三木 篤 さん
「魚の鮮度に関する関心が非常に高く、いま北海道大学さんと一緒に”ミラサル”(MILASAL)という取り組みで魚の鮮度 ”K値” という指標を使ってシュミレーションしようという試みに繋がっている」
「こういう温度管理だったらそれはいま食べるには本当に美味しいんじゃないか、というような感覚を養えているのはそういった指標(K値)があるからかなという風に感じている」
「あくまでもデジタル技術は手段に過ぎないので、その先の未来をみんなが共通認識として描けていくというのがゴールだと思う」
大原漁港午前4時30分、漁師をサポートする人たちの朝は早い。働き手の高齢化が進む一方で、いすみ市は人材不足とどう向き合っているのでしょうか。
いすみ市役所 水産商工観光課 主査 山口 高幸 さん
「何よりも人口減少がある中、人手が減っていく。これをICT(情報通信技術)に託したいというのは漁業DXの中では感じている」
「また同時に、“鮮度の見える化”を図りたい」
「いくら魚を獲っても鮮度を良く出したい、本当に魚屋さんが良いというのか、その先の消費者が欲しいというのか、この価値をしっかり伝えられるからこそ、漁業・水産業というものが長く続けられるのではないかと思う」
「魚というもの自体がバトンになるので、これを通じてこの地域の人々が一体となり、他のところに行って『美味い魚ないか?』『大原の魚食えよ』と言ってくれることを望む」
いすみ市で取り組み始めた漁業DXが日本の漁業スタンダードになる日は、そう遠くないかもしれません。
(モーニングこんぱす 9月12日放送分より)