夏の楽しみ、海水浴や川遊び。そのかたわらで、毎年必ずと言っていいほど発生するのが水難事故です。
6月19日(水)東京ポートシティ竹芝にて、水難事故の防止などについて話し合う「海のそなえシンポジウム」が開催されました。
「海のそなえプロジェクト」は、正しい「海のそなえ」を身に着けることを目的に日本財団・うみらい環境財団・日本水難救済会・日本ライフセービング協会の4団体が取り組む事業。
日本財団 海野光行 常務理事
「常識と思っていたことが本当は常識ではないんじゃないか。色々な方々と一緒になって考える場としてシンポジウムを企画した」
今回のシンポジウムでは、1万人以上を対象に行った水難事故に対策に対する大規模調査の結果を公開しました。
警察庁のデータによると、水難者の数は年間約1600人。その内の半数約800人が死亡・行方不明となっています。
事故の発生場所は海と河川が圧倒的です。加えて、事故が多く発生する時間帯も。
レスキューに出動した時間帯として多いのが午後2時頃です。午前中から遊んだ疲れがでてくる、昼食後で気が緩んでいる、午後になって海風が強くなってくる、などの要因で事故が増えると考えられています。
要救助所の性別は、男性が女性の約1.7倍に上ります。男性の方が飲酒後も遊泳する割合が多いという調査結果もあり、飲酒後の遊泳が危険なことが窺えます。
なお、交通事故による死者数が車の安全性能の向上などによって大幅に減っているのに比べ、水難事故による溺死者は30年近く横ばいな状態が続いています。
このテーマで行われたディスカッションでは、3人の識者が登壇しました。
テレビプロデューサーの大野さんは取材を通じて知った、「コピペ事故」という言葉を取り上げ、事故が発生しても調査や分析・共有がされていないことが同じような事故が繰り返される要因などと、問題点を指摘しました。
日本ライフセービング協会・理事・石川仁憲さんは水難事故の自然要因として多い、離岸流について説明。なにが危険でどう対処したらよいか、多くの人が知識・技能を身に着けていないことが事故が繰り返し起こる理由では、と分析しました。
日本水難救済会・理事長・遠山純司さんはおぼれた時の対応として広く言われてきた、大の字背浮きの検証実験の結果について紹介しました。大の字背浮きは、波のある状況では有効な方法ではないとして、これまでの常識は通用しないと警鐘を鳴らしました。
今回のシンポジウムで総じて語られたのは、「海を安全に楽しむ環境をつくっていくこと」です。溺れてしまったら自力で助かるのは難しいということを踏まえ、最新情報を取り入れて、水難教育を普及させる、状況にあったフローティングアイテムを使う、過去のデータを分析・共有し社会全体で事故を防ぐ仕組みをつくっていく、こうした多面的な対策の必要性が確認されました。
日本財団 海野光行 常務理事
「今回の調査で溺れた経験をした人のうち、ほどんどが12歳以下の時であることがわかった。また、小学生未満で水難事故防止の教育を受けていない割合は91%、さらに小学校低学年では63%くらいの子どもたちが教育をうけていないという結果がでた。これからこの世代に対しても私たちは事業展開をしていく必要はある。」