レポート
2022.07.28

【特集】死亡事故多発”幕張の浜” 再発防止に必要なことは

 千葉市美浜区のZOZOマリンスタジアム裏手にある、人工ビーチ「幕張の浜」

 約2キロにわたる砂浜で、7月8日、平日の夕方でも涼を求める高校生のグループや若者のカップルでにぎわっていました。

 白い砂浜が続く様子は、まるで海水浴場のようにも見えますが、実はこの浜辺、泳ぐことは禁止されています。

 その背景には…。

 

何気ない浜で起きてしまう事故とその原因とは

記者リポート
「一見穏やかに見えるこちらの砂浜ですが、あちらの突堤付近では、2021年まで4年連続で死亡事故が発生しているということです」

 2018年から2021年まで、いずれも10代後半の男性あわせて5人が犠牲となりました。

 そのうちの1人、菅沼大斗さん(当時17)を亡くした父親の建一さんです。

菅沼建一さん
「声かけたら『何?』って起きそうな感じではいたけど、近づいたらやっぱりもう亡くなっていて。『なんでうちの子なのかな』って。やっぱり神様はいないなと思ってしまった」

 2018年7月31日、当時高校2年生で夏休み中の大斗さんは、友人3人と幕張の浜を訪れました。

 建一さんは、LINEで「海に行ってくる」「友達の家に泊まりに行って良いか」と連絡を受けたといいます。

 泳ぐのが苦手だったという大斗さん。
 建一さんは、海に入らずに浜辺で遊んでいるものと思っていました。

 しかし、大斗さんは友人らと突堤から海に飛び込む遊びをしていた際に、波に流されたとみられるということです。

菅沼建一さん
「下手すれば大斗みたいに死ぬこともあるということを、みんなに知ってもらえると良いと思う。なので、遊泳禁止(場所)には絶対(泳ぎに)行かないようになってもらいたい」

大斗さんが飛び込んだとみられるのが、砂浜から海にかけて伸びる約250メートルに及ぶ突堤です。

 この突堤は立ち入りが禁止ですが、大斗さんの事故の後も、2020年8月と2021年5月もあわせて3人が死亡しました。

 現場を調査した水難学会の斎藤秀俊会長は、「予想外の深さ」が原因だと指摘します。

水難学会 斎藤秀俊 会長
「普通だったら『突堤の根元から先端に向かって、徐々に深くなる』とみなさん感じると思う。幕張の浜は砂の海底だが、突堤のちょうど真ん中あたりで深くなって、人の背丈超える。突堤の先端に向かうに従い、また少し1回浅くなって、さらに突堤の先端付近ではまた深くなっている」

 水難学会が作成した海底の地形図では、中央のオレンジ色のあたりで、水深が2メートルを超え、砂浜に近いところでも急に深くなっていることがわかります。

 その原因について齋藤会長は次のように指摘します。

水難学会 斎藤秀俊 会長
「海の中の流れは複雑なので、たまたまそうなったとしか言いようがない。例えば沖からくる波や、突堤に反射して起こる波、いろんな波が発生し、それによって、ある流れが生じて、その流れによって砂が削られるところと、たまるところができる。結果としてこのような海底構造になったのが本当のところ」

 県によりますと、1979年に整備された幕張の浜は、波や潮の満ち引きで徐々に砂が削られ、維持・管理が困難となったことなどから2000年に海水浴場としての役目を終えました。

 ただ、いまも砂浜自体は残り、市民の憩いの場として人々に利用されています。

水難学会 斎藤秀俊 会長
「(安全という)思い込みがあること自体、危険。あちこち背の立たないような深いところがあると思って、ひざ下までの水深で遊ぶことを徹底してほしい」

 一見おだやかに見える千葉市の海で失われた若者の命。
 その危険性の周知とともに対策の強化が求められます。

 亡くなった大斗さんの父・建一さんから取材後、記者にメッセージが届きました。

菅沼建一さん
「我が子が亡くなると悲しむ人が大勢います。親はずっと後悔しかありません。だから遊泳禁止の場所には泳ぎに行かないで欲しい」

 相次ぐ事故を受けて突堤では、立入禁止の柵が二重になるなど対策もされていて、警察によりますと、直近2021年5月の死亡事故から7月15日までは「人が立ち入っている」などの通報はないということです。

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