幻想的な自然現象が九十九里町で観られること皆さんご存じでしょうか。
その調査・研究を行っていて将来的に観光資源にしていきたいと考えている男性を取材しました。
千葉県九十九里町に住む大木淳一さん。
大木さんは普段、県立中央博物館で地質学を専門とする学芸員として勤めていますが、九十九里沖で見られる、ある現象の研究もしています。
それはー
大木さん
「まっすぐなはずがグニュっと曲がってしまっている、これが蜃気楼(写真①)」
「うまくこういう景色に出会えると面白いシーンに出会える」
そう、蜃気楼です。
蜃気楼は温度の違う空気の層の中で光が屈折すると、地上や水上のものが逆さまに映ったり、伸びて見えたりする現象のことを言います。気温や風など特別な条件が揃わないと観られません。
国内では富山県や北海道が観測地として有名ですが、実は九十九里町でも蜃気楼が観られるんです。
大木さん
「自分が今まで調査してみた結果、年間通して珍しい蜃気楼が観られると分かってきた」
「ほかに年間で観られる場所は北海道のオホーツク海側だけで、全国でも2か所しかない」
「九十九里が全国に誇れるフィールドということに間違いない」
大木さんの調査によると、九十九里町周辺は標高の高い山などがほとんど無い為、地上付近の大気の動きが反映されやすいこと。また、晴れの日が多く視界が良いことなどの理由から、1年中蜃気楼が観られるのではないかと推測しています。
大木さんが観察を始めたのは11年前。
東日本大震災の津波の被害状況を調査する中で、地元の九十九里町のホテルを訪れた際に目にした蜃気楼の写真がきっかけでした。
大木さん
「だるま太陽という太陽+人間の肩、というような朝日の写真が(ホテルに)飾ってあった(写真④)」
「それを見た時にすごくきれいだなと思い、それが”蜃気楼”だということを初めて知った」
「このだるま太陽が年間通して、どれくらい・いつ観られるのかを調べれば、少しは地元に対して観光のネタとして与えられるのではと思った」
以来、ほぼ毎日町内の真亀海岸などに通い観察。
2019年は珍しい蜃気楼が、年間98日と全国で最も観測できた場所となりました。
中でも去年、北海道の道東で観られることで有名な珍しい蜃気楼が九十九里町でも。
大木さん
「真四角だがそれがふたつ重なっている、いままで見たことが無い太陽(写真⑤)」
「北海道の別海町が四角い太陽がでることで有名で、全国からカメラマンが押しかけるが、そこも年に数回しか見られない」
「実は九十九里浜で四角い太陽に出会えるということに本当に驚いて、毎日ねばった成果だと感じている」
果たして蜃気楼は観られるのかー
駒井アナウンサーも、大木さんに同行して観察します。
そして、午前5時7分。
大木さん
「ほんの隙間だけ太陽が顔を出している感じ。でもすぐに上の雲に隠れてしまう」
駒井アナウンサー
「ちょうど1本の線のように見える」
大木さん
「これはこれで珍しい。こんなギリギリの隙間で観られる太陽は私も、なかなか観たことがない(写真⑧)」
残念ながらこの日は、地上と海水温の差がほとんどなかった為、蜃気楼を観ることはできませんでしたが、今の時期には写真⑨のような蜃気楼が観られます。
自然が織りなす芸術とも言える蜃気楼。
現在大木さんは、この蜃気楼の魅力を多くの人に伝えようと地元の小学校などで、出前授業や観察会を行っているほか、全国の蜃気楼の研究者で構成する日本蜃気楼協議会で研究成果を発表するなど、精力的に県内外に発信しています。
そして今後はー
大木さん
「富山県や北海道は行こうと思うと遠いので、それに比べると九十九里浜は本当にあっという間に都心の人を呼ぶことができる」
「蜃気楼をひとつの話題にして、ぜひ”千葉県の自然・九十九里の自然“を知ってもらう、そういいう意味ではこの九十九里浜の蜃気楼は、ひとつの観光の資源だと思う」
「この凄さを日本中にアピールしたいと思っている」
九十九里町の蜃気楼を全国へー
この浜辺に多くの人が蜃気楼を観る景色を夢見て、大木さんの活動は今後も続きます。
駒井アナウンサー
「九十九里町での蜃気楼の観察の記録は、1911年以来。大木さんの観測でなんと104年ぶりとなったんです」
「大木さんによると観測記録のない間も、もちろん蜃気楼は見られていたと思うが記録として残す人がいなかったのではないかと話していました」
「また、富山県では珍しい蜃気楼が観られると街で花火が上がったり、北海道では蜃気楼と野鳥のツアーがあったりと町全体で蜃気楼を盛り上げているとのこと」
「大木さんはこの九十九里町も、価値ある貴重な蜃気楼をきっかけに町に多くの人を呼び込みたいと話していました」
「私もまた蜃気楼を観に、九十九里町へ足を運びたいと思います」
(newsチバ 2023年9月19日放送分より)